ko_ta_roのライフログ

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2020-8-5. メモ 

 また、時に関わる因果の道理をも恐れ謹むべきである。去年「花」が盛りであれば、今年は「花」がないであろうことを知るべきである。

 

短い時間の内にも運勢の良い男時、運勢の悪い女時がある。

 

どのように修しても猿楽能にも成就する良い時があれば、必ず成就しない悪い時がまたあるであろう。これはどうにもならない因果である。  

これを心得て、さほど晴れがましく大切でない時の猿楽では、立合勝負にそれほど執着心を起こさず、骨をも折らず、勝負に負けても気にかけず、所作を出し惜しんで、控えめ控えめに修すれば、観衆もこれはどうしたことかと興醒めしているところに、晴れの大切な猿楽の日に遣りかたを変えて得意とする猿楽能を精魂を込めて修すれば、これまた、観衆に思いの外の心が生まれて、大切な立合勝負に必ず勝つことがある。これは「珍しき」の大いなる効用である。先日悪かった因果で、今日はまた良いのである。  

 

だいたいのところ、三日に三度の猿楽が催される時は、最初の一日などは、所作を出し惜しんで、程よく対応して、三日の内でとくに尽力すべき日と思われる時に、良い猿楽能で得意とする猿楽能を懸命に修すべきである。一日の内でも、立合勝負などで、万一女時にぶつかったならば、初めは所作を出し惜しんで、相手の男時が女時に下がった時に、良い猿楽能を追い込むように激しく修すべきである。その頃合がまたこちらに男時が戻ってくる頃合である。ここで猿楽能が成就したならば、その日の第一の猿楽能を修すべきである。  

 

この男時・女時とは、あらゆる勝負において、必ず一方がはなやかに勢いづいて運勢が良くなる頃合がある。これを男時と心得よ。立合勝負の猿楽能の数が多いと男時・女時は一方から他方へと移り替り移り替りするであろう。或る書物に、勝負神といって勝つ神・負ける神が、勝負の場を守っておられる、とある。兵法でもっぱら秘事としていることである。  

 

世阿弥 「風姿花伝